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あしざまに申す者
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■ 2013-03-02
■ 平家物語、禿
入道相國の謀に、十四五六の童を三百人すぐって、髮をかぶろに切りまはし、赤き直垂を着せて、召し使はれけるが、京中にまんちみちて、往反しけり。
おのづから、平家の御こと、あしざまに申す者あれば、一人聞き出さぬほどこそありけれ、餘黨にふれ回し、その家に亂入し、資材雜具を追捕し、その奴をからめて、六波羅へ率て參る。
されば、目に見、心に知るといへど、詞にあらはれて申す者なし。
六波羅殿の禿とだにいへば、道を過ぐる馬車も、皆よぎてぞ通りける。
■ 2013-03-01
■ 日本経済新聞・朝刊